そろりそろりとドアを開ければ、秋のにおいのする風が吹きつけた。
鼓動のスピードが速すぎて、ドキドキじゃなくてドドドドって鳴る。
「見つかると面倒だから、早くドア閉めてくんない」
水樹くんは空を見るのをやめ、ゆるり、ようやく私のほうを振り向いて言った。
「あ、はい……」
まだ手が震えてる、どうしよう。
つけてきた挙句、立ち入り禁止の屋上で二人きりになってしまった。
「こんなとこでなにしてんの?」
水樹くんはじっと、澄んだ瞳で気だるげに私を見つめて聞いた。
手だけじゃなく足まで震えそうだ。
「だれかが入っていくの、見えたから」
体をのっとりそうな鼓動の音に耐えながら、平然をよそおって言う。
「俺だからついてきたんじゃないの?」
水樹くんに聞かれて、私はあわてて首を横に振った。


