自ら捨てたくせにあの道を歩いてしまうのは、ばったりとまた会いたいからだろうか。未練がましく隣の窓をふと眺めてしまうのは、君が窓を開けるのを待っているからだろうか。
何年も経った今でも、何かと適当な理由をつけて故郷を離れることを先延ばしにしている私は未練がましくてこじらせている。
何年も経つとどんどん何もできなくなくなる。
謝ることも、遊びに行くこともできないまま、そんな勇気なんてどこかに消えてしまって、未練と後悔だけが歳を取るたびに、この街にいるたびに蓄積している。
この蓄積はきっと死ぬまで溜まり続けるだろう。溜まっていくものを黙って見ているのは寂しいから、またどこかでなんて言う馬鹿馬鹿しい妄想を繰り広げる。
会いたいような会いたくないような。きっと会ったところでもう何を話せば良いか分からないし、きっともう忘れられているだろう。その方が健全でずっといいが。少し寂しいと思ってしまう。こんなわがままで傲慢で未練がましい私はどこに向かうのだろう。
きっと近所じゃなかったら、出会えなかった。
きっと同級生だったら、話せなかった。
でも学年が違うから、性別が違うから、どの道こうなってしまっていただろう。
大切なものは大切に。
大切の仕方なんてまだ分からないし、素直でもないし、天邪鬼だけど。
大切にしたいものは大切にしたい。
そしてふと思う。
私の頭の中で繰り広げられていたお伽話だったのではないか。本当に君と遊んでいたのか。人の記憶は気づかないうちに美化されていくらしい。
それほど時間が過ぎて、声も顔も何もかも忘れてしまった。
ただ過去にしがみついている屍になった。
字を書くたびに、字を褒められたことを思い出して、自転車に乗るたびに、自転車の乗り方を教わった時の心得が脳裏をかすめる。
もう会うことはないだろう君へ。
元気ならばそれでいい、生きていればそれでいい。
私は過去の屍と共にゆっくりと生きていくのだろう。


