過去の屍【完】



「どうして二人はよく遊んでるの?」

そんなの、一緒に遊びたいからに決まってる。

でも私と君は本来、住む世界が違うところにいる人たちなのだと知った。
私はいい子を装うのが得意で先生が大好きで、君は、やんちゃで自由でどちらかと言うと問題児。

そんな私たちは一緒にいることは物珍しいらしく、幾度となく不思議がられた。

最初は担任の先生だけの素朴な疑問が、いつの間にか、牙に見えて刺そうとしているのではないか思えてきた。


「あんな奴となんで一緒にいるの?」
「あんな奴と一緒にいないほうがいいよ」


どうしてそんなこと言われないといけないんだろう。
たまに意地悪だけど、優しいのに。


小学校の入学式からしばらくして、揶揄われていた私を助けようとしてくれた。

「明日から一緒に学校に行こう」
「教室に人が来るまで、こっちのクラスにいなよ」
「何かあったら言いなね」

そんなことを言ってくれる君は優しいよ。でもその優しさに甘えた。


「どうして、いつも遊んでくれるの?」

学年も性別も違う君。住む世界だって違うらしい君。

「なんとなく」

君はいつもそんな風に答えた。


ただ近所で、遊ぶ人が近くに他にいなくて。
そんな理由だったら嫌だなと思いながら、繰り返されるそれに、繰り返される答え。


「君だから」なんていう少しの甘さを含んだ言葉だったら、何か違っていたのかもしれない。何を求めていたのだろう。


曖昧な答えは一緒にいるより喜々よりも、社会の恐怖が勝った。
私にとって学校は小さくて大きな社会で。
上級生よりも同級生が怖かった。

言い訳と言われればそうだろう。
自分が可愛かっただけだと言われればそうだろう。


周りに振り回されることが怖くて、大切な人の存在の否定は自分を否定されているように思えた。だから自分を守った。自由を守った。



「ねぇ、もう家に来ないでよ。一緒に遊ぶのもうやめよ。君もちゃんと同級生と遊びなよ。」