私は、君と初めて会った日のことを覚えていない。
空がどんなで、どんな服を着ていて、何を思っていたか。
何を思って、君と話したか。
母親がよく聞かせてくれたけど、全くピンと来ない。
ふーんという感じだ。
でも、当時の写真を見せながら「あの時のあなたは、とても楽しそうだったのよ」なんて言うから、本当に楽しかったと思えてしまっている。
「二人はどうやって会ったの?」と聞かれる度に、当時の写真と母親の話がリンクして、本当の記憶みたいに、写真の風景が頭を駆ける。
本当は何も覚えていないのに。
頭の奥深くにあの写真が潜んでいて、思い出すたびにそれが勝手に動き出してあたかも実際に体験したかのように思えてしまう。
だから、気づいた時には、もうすでに君の隣が特等席で優先席だった。
誰からの許可もなく座れた私は少し傲慢でわがままだった。
だからかもしれない。神様は罰を与えた。
成長と共に、違和感も一緒に大きくなり心と共存していった。


