その後も宴は続き、お開きになったのはシンデレラならダッシュで帰るレベルの深夜でした。

 結局この日私がダンスをしたのは三将様たちと、本当に高位の方数人でした。お勉強の時に覚えた絵姿そのままだったので誰が誰というのは判ったけど、今日の私は異邦人。知っていても知らないふりが鉄則です。お稽古した仕草やマナーを駆使し『異国のご令嬢』を完璧に演じきれたと思います。一方、私のことが気になって仕方ない様子のお貴族様たち。どの方も私が〝どこの国の人物〟で〝どんな交易をしたいのか〟ということを暗に探ってきていました。
「お仕事のことは父たちに任せておりますので、わたくしは全く知りませんの」
 だの、
「この国はとても素晴らしいところですね!」
 なんて、テキトーにしらばっくれておきました。
 あとは自分の席でニコニコしながら会場に目を配っていました。簡単な仕事のように見えるけど、目立つ場所なので少しも気を抜けないし、ちらほらと見かける若いお嬢様からの視線は痛いしで、かな〜り気を遣いました。