二曲ほど踊りまた席に戻る頃、お貴族たちのダンスが始まりました。踊る人もあればおしゃべりする人、軽食をつまんだり飲み物を飲んだりと、和やかな感じでパーティーが進んでいきます。そして竜王様の元には、次から次へと挨拶の貴族がやってきました。『今日はお招きありがとうございます』という定型文(?)から始まり、最後にはみんな決まって、『そちらのお客様は……?』と、私のことを尋ねました。そりゃそうですよね。竜王様のエスコートで入場してきたのに紹介なしのスルーって、気になるしかないでしょ。わたし的にもどんな放置プレイやねん、って感じだし。
「商談を進めているところの令嬢だ。我が国を知ってもらおうと招待した」
「そうでございましたか。それで、その商談とやらは……」
 お貴族様がより詳しいことを聞こうとしようものなら。
「まだ話す段階ではない」
 一言でバッサリです。しかも『これ以上聞くな』オーラがびしびし出ているので、誰もそれ以上は突っ込めず、不完全燃焼のまま戻っていきました。