時間になり、シエナとクラレットに先導されてパーティー会場に着きました。会場は、婚活パーティーで使ったあのお部屋です。
 いよいよ出陣じゃぁ! 扉の前で深呼吸して意気込んでいると、後ろから足早に近付いてくる音が聞こえました。
「待たせたか?」
 聞き覚えのある声に驚いて振り返ると、やはりそれは竜王様で。いや貴方、もう既に中にいるんじゃなかったんですか?
「いえ、今来たところです。というか、竜王様は先に会場入りしてたんじゃなかったんですか?」
「誰がそんなことを言った?」
「いや、勝手にそう思ってただけですけど」
「余以外に誰がライラのエスコートをするのだ?」
「エスコート?」
「そうだ」
 あ、そういうシステムなんですね。こんなパーティー形式、現世(いま)前世(むかし)も初めてなもんで、すっかり自分一人で会場に乗り込んでいくもんだと思っていました。誰も説明してくれなかったし。ん? 当たり前すぎて説明なしパターンだったとか?
 エスコートという概念が全くなかったのでキョトンとしていると、竜王様がクスッと笑いました。
「ライラは一人で行くつもりだったのか?」
「そうですよ」
「くっ……やはりそなたは面白いな」
「面白くないですぅ」
 竜王様がスッと右腕を出したので、私はそっと手を添えました。
「ほら、むくれてないで行くぞ」
「はい」
 今度こそ、いざ、出陣です!