「これだけ踊れたら十分だ」
「ありがとうございます。また自信が出ました」
「そうか。では戻ろうか」
「はい」
 竜王様の言った通り本当に軽く一曲分くらい踊り、おさらいは終わりました。また褒めてもらったので、今日は上手に踊れそうです。
「その前に」
「?」
 繋いだままになっていた手を、竜王様が持ち上げました。そして、ご自分の胸ポケットから何かを取り出すと、私の指に嵌めました。
「……指輪」
 突然のことに驚いて、繋いだままの手を目の高さに持ち上げました。左手薬指に嵌められていたのは、黒蝶貝のような宝石で花びらを(かたど)った、薔薇モチーフの美しい指輪でした。リングの部分はダイヤのような石がパヴェセッティングで飾られています。シックだけど、すごく素敵。
「ライラのために特別に作らせた。きっとライラを守ってくれよう」
 そう言うと、竜王様は薔薇のモチーフに軽く口付けしました。またまた突然の出来事に、私は固まったまま動けなくなりました。
「では、後ほど」
「…………はい」
 流れるような指輪へのキスを残して、竜王様は先に部屋を出て行きました。
 どうしよう、ドキドキが止まらない。せっかく落ち着いてきたっていうのに、違う緊張させられちゃいました。顔もめちゃくちゃ熱いので、真っ赤になってると思います。これ、本番までに治るかな? ああもう、どうしてくれるんですか〜〜〜っ!