不安も解消されたし、あとはゆっくり部屋でお支度でもしようかと思ったところで、広間の扉が開いて声が聞こえました。
「直前まで熱心だな」
 広間に入ってきたのは、行事の最中にいるはずの竜王様じゃないですか。
「竜王様!? 行事はどうされたんですか?」
「さっき終わったぞ。次のパーティーまで休憩だ」
「え!? もうそんな時間!?」
 一体私はここでどんだけ時間を過ごしてたのかしら? でもシエナもクラレットも言わなかったから、まだ大丈夫なものだと……。私が咄嗟にシエナたちの方を見ると、二人は揃って『まだ大丈夫』と口パクしていたので安心しました。
「ライラはこれから支度か?」
「はい。でも緊張で居ても立ってもいられなくて厨房で調理したり、ここでダンスのおさらいをやったりしてました」
「そうか」
 竜王様は窮屈そうなシャツの襟元を緩めながら、近くの椅子に座りました。その仕草がネクタイを緩める感じに似てるからかな、ドキッとします。こういうオンからオフへの切り替えって、強制的にときめかされますよね。
「余も、ライラを見習っておさらいをしようか」
「なんでですか。竜王様は十分にお上手じゃないですか」
「いや、今日はライラをフォローせねばならないからな。余も緊張している」
「もう! じゃあ、私は竜王様にフォローさせないように頑張ります!」
「ははは、その意気で頼むぞ。まあ、せっかくきたんだ、余も少し練習していこう」
「はい。シエナ、カウントをお願い」
「かしこまりました」
 シエナが手拍子で奏でるリズムに乗って、竜王様と私は踊り始めました。