とうとう建国記念行事の当日がやってきました。招待客が来るのは昼からですが、竜王城は早朝からバタバタしています。ウィスタリアさんたちは部屋の準備に動き回り、フォーンさんは仕上げのチェックに忙しそうです。
「フォーンさんがいつも以上にカリカリしてる」
「まあね〜。準備は抜かりなく整ってるけど、それでもあの人心配性だから」
「だね〜」
「って、こっちも呑気におしゃべりしてる暇ないのよ」
「そうだった」
 厨房ももちろん、朝から準備にてんやわんやです。冷蔵庫ができたから例年より仕込みは楽になりましたが、それでも用意する量が半端ないので忙しいことには変わりありません。トープさんたち調理隊は温かいものから作り始めています。冷たいものは直前に作る方が冷蔵庫の容量を食わないのでね。温かいものは出す直前に温め直せるということで先に作ります。調理しない給仕部隊は、使う食器やカトラリーなどを入念に磨いています。
 って、なぜ私が朝から厨房にいるかって? それは、部屋にいても落ち着かないから。
 部屋に篭って『他国のお嬢様』という設定に沿って役作りをしていてもよかったんですが(役者さんか!)、気が付いたら落ち着きなく部屋の中を右往左往しちゃってました。
「ライラ様の準備までには時間がございますから、それまで自由になさってよろしいですよ」
 ちょうど部屋に顔を出したウィスタリアさんがそう言ってくれたので、ありがたく自由にさせてもらうことにしました。
「厨房に行ってもいいですか?」
「大丈夫ですわ。ああ、今日はシエナとクラレットと一緒にいてくださいませ。彼女たちがライラ様の時間を管理しておりますので」
「わかりました」
 早速お仕着せに着替えた私はいそいそと厨房に向かった、というわけです。そして今に至る。