「そういうわけで、カッチカチに乾燥した魚が欲しいんです」
「う〜ん……」
 早速行商に来たマルーンさんを捕まえて、私は鰹節の説明をしました。初めて聞く『鰹節』という食べ物(?)に、どういう魚を使ったらいいのか、どういう工程で作ったらいいのか、真剣に考えてくれました。削った残りの鰹節の香りを嗅いだり叩いたり、カツオ出汁の味噌汁を飲んで味を確認したり。
「多分この魚はこれだと思うんです。これを使って、長めに燻製したらそのあと天日干しかな。燻製に使うチップは、あまりクセがないのがいいですね」
 しばらく考えていましたが、今日持ってきていた魚の中から一匹を取り出しました。見た感じがカツオっぽいから、味も似るのかな。
「できそうですか?」
「なんとか。一回持って帰って試作してきます」
「お願いします」
 前世の〝本物〟の鰹節の作り方はさすがにわからないけど、似た感じでできたらいいんです。こちらは解決しそうでよかったです。鰹節が安定供給されるようになったら、料理のレパートリーが飛躍的に広がる可能性がありますからね!