ラピスさんに呼ばれても、厨房の入り口でちょっともじもじと恥ずかしそうにしている男の子。ラピスさんが連れてきたってことは、家族の誰かかな?
「かわいいですね。ラピスさんの弟くん?」
「違うわ、私の息子よ」
「えっ、息子さん!? ラピスさん、結婚してたんですか!?」
「そうよ」
「知らなかった……」
「聞かれてないから言ってなかったもの」
「デスヨネー」
 私とそんなに歳が変わらないと思っていた、いや、むしろ私より若いと思ってたのに結婚してお子さんまでいたとは。言われてみれば目元がラピスさんによく似ています。
「お名前は?」
「アスターよ」
「普段はラピスや旦那の両親のところで預かってもらってるんだけど、たまに都合が悪い時にはこうしてうちに連れてきてるんだよ」
 おいで、と、モーブさんが手を引いて中に入れました。
「モーブさんのご好意に甘えてね」
「いやいや、アスターはお利口さんだから、すっかり孫みたいなもんだ」
「そうだったんですね。じゃあ、アスターの分も味噌汁を用意しましょうね。アスター、お魚は好き?」
「…………うん」
 コクンと頷くそのほっぺたがプルンって! かわゆすぎでしょ。リアル天使か。
 お魚といってもアスターの知ってるお魚じゃないから、小さい子でも食べやすい部分を選んであげないとね。もちろん骨には気をつけなくちゃ。私はアラの中でも食べやすそうなところを選び取り分け、食べやすい温度に冷ました味噌汁に入れてラピスさんに渡しました。
「うん、熱くないね。はい、アスター」
「いただきます」
 ラピスさんが温度チェックをしてからアスターにお椀を渡すと、上手にスプーンで食べ始めました。
「美味しい?」
「うんっ!」
「よかった〜」
「いやこれほんと美味しいわ。でもただのお魚具材のミソシルじゃないわよね? いつもとなんか違う?」
 ぱあっと明るく微笑んだアスターにこっちもつられて笑顔になっていると、隣で食べていたラピスさんが驚いて聞いてきました。
「魚の捨てる部位でお出汁を取ったんです。で、そのまま具材にしてます」
「だから骨が多いのね。まあ、それはいいけど、あんたってほんと、料理に関しては天才だわ」
「いやぁ〜それほどでも〜」
 しかしこれ、私のオリジナルじゃないんですよね。単に前世の知識のおかげ、天才でもなんでもないんです。料理に関しては、ってとこを強調されてるけど、そこは百も承知なのでスルー。