部屋に戻るとすぐにベッドに直行。枕に顔を埋めてさっきの自分の態度を省みると、改めて血の気が引いてきました。
「ないわ。マジでないわあんな態度。もっと言い方ってものがあるでしょ……子供か私は」
 イライラでどうにかしてたわ、私。竜王様たちの会話は聞いてないわ、勝手にブチギレてキレまくって。穴があったら入りたいし、タイムマシンがあったらさっきの自分をぶん殴ってでも黙らせたい。自分で自分にドン引きしているところに、ドアがノックされました。
「はい」
「ライラ? 入っていい?」
 その声は、久しぶりに聞くマゼンタの声でした。

「マゼンタ!? どうして??」
「まあまあ、説明はご飯を食べながらね」
「ご飯?」
「そうよ。あなた、昼食が途中でしょ」
「なんで知ってるの」
「さ、食べなさいな」
 マゼンタが運んできてくれたお皿には、ちょうどランチプレートのような感じで、今日のお料理が盛り合わされていました。
「竜王様がね、持っていってやれっておっしゃったのよ」
「竜王様が?」
 激怒でダイニングを追い出されたはずなんだけど?
「そう。ライラの様子がおかしいから、とにかく休めなくちゃって思って中座させたみたいよ。バーガンディー様がこっそり教えてくれたの」
 竜王様の指示を伝えに厨房に来たバーガンディーさんが、簡単にダイニングでの出来事をみんなに話したようです。ついでに竜王様の意図も。そんなこととはつゆ知らず、なのに私は逆ギレ気味で出ていって……うわぁぁぁぁ! 最悪だ。やっぱりさっきの自分を殴りにいきたい。
「それでね、しばらくお妃教育はお休みにしてくれるみたいよ」
「お妃候補、クビじゃなくて?」
「あはははは! そんなこと、ナイナイ!」
 マゼンタは笑ってるけど、私は本気でクビだと思ってたわよ。
「お城の中だとあまりリフレッシュにもならないから、好きなところに出かけてみればって」
「好きなところ……?」
 そう言われても全然詳しくない竜王国、知ってるところなんてせいぜいモーヴさんのお店か、逃亡先の海辺の村くらいです。海辺の村は都と全然違うからリフレッシュになると思うけど、いかんせん遠すぎます。じゃあ、気楽に出かけられるモーヴさんのところかな?
「う〜ん、モーヴさんのところに行きたいかも。でもいきなり押しかけたら迷惑だし」
「トープさん伝いに聞いてみたら? ダメとは言われないと思うけど」
「そうね」
 すぐにトープさんから話が行き、モーヴさんは快諾してくれたようです。しかも、『しばらく滞在してよい』との竜王様のご厚意で、好きなだけ滞在していいことになりました。ただし。
「あまり長いと強制的に迎えに行くぞ」
 だそうです。