予定ならば晩餐のお支度直前までダンスのレッスンをするはずだったんですが、早めに切り上げてもらえたので三十分ほど空白の時間ができました。もちろんソッコーで自分の部屋に戻り、ふかふかお姫様ソファに崩れ落ちました。綺麗なお部屋は自室としては違和感ありありだけど、疲れ切った今の状態では全く気にならない。
「ごめん、ちょっと寝かせて」
「ベッドで休まれては——」
「ベッドで寝たら朝まで起きない自信があるのでここでいいです。十分です」
 心配するシエナには悪いけど、頭も精神も酷使したのでとりあえず惰眠をプリーズ! おやすみ三秒で爆睡モードに入りました。

「——さま、ライラック様——」
「ん〜〜〜…………はっ!」
「そろそろ晩餐の準備をいたしましょう。起きてください」
「やだ……まだ…………あと五分」
「そう言って、もう二十分も待ちました」
「ん……晩御飯まで……あとどれくらい……?」
「三十分です」
「えっ!?」
 慌てて飛び起きたら、体にかけてあった毛布がずり落ちていきました。自分で着た覚えがないからシエナがかけてくれたのかな。お礼はあとで言うとして、今は時間が最優先です。
「まあ三十分もあれば余裕でしょ。髪を整えるくらいだし」
 よかった、そんなに焦る必要ないじゃない、と一安心していたら。
「何をおっおっしゃっているんですか! 着替えと、髪、そして少し崩れたメイクもお直ししなくちゃいけません。時間がありませんわ!」
「え〜〜〜っ!?」
 シエナに怒られてしまいました。いや、朝からフツーに綺麗なドレス着て、お化粧もちゃんとしたからこれで晩餐も大丈夫でしょとたかを括ってたんだけど、どうやら認識が違うようでした。焦るシエナにつられ、私も慌てて準備を始めました。