「ヴァヴェルで過ごした時の記憶もあるだろうから重複するかもしれませんが、一通り最初から話しましょうか」
「お願いします」
 ヴァヴェル人だった頃の記憶ってインディゴ様は言ったけど、所詮は庶民、前世のように義務教育なんてなかったから、生きていく上で必要な知識や技術はあるけど、勉強的なことに関しては無知に等しいんですよね。
 地図には大きな大陸が一つだけ描かれていました。これが全世界なのか、それとも一部なのかはわからないけど、とにかく大きな大陸です。そして前世の地図と同じように、領土が線で区切られていました。大小、たくさんの国があるようです。
「ここが我が竜王国です。ここに都が、そしてライラの逃亡先の海辺の村は、ここですね」
 竜王国だけの詳細な地図を使い、インディゴ様が説明してくれました。いや逃亡て。——間違いじゃないけど。
 こうして地図で客観的に見ると、都と村は結構離れてますね。ああそうだ、村と都の間の定期便のこと、忘れず竜王様にお願いしなくちゃ。
「そしてここが、ヴァヴェル国」
 そしてまた大きい方の地図に戻り、竜王国の上隣、地図の上部が北を指すのならば北の隣と言うべきか、そこにヴァヴェル国がありました。ほほ〜、ヴァヴェルってそんなところにあったんですか。初めて知りました。なにせヴァヴェル人だった私は女王様のお城のイチ料理人で、国外に出ることなんてほとんどなかったもんだから、国境どころか国の形だってあやふやなんです。全然自慢じゃないけど。だからインディゴ様の授業で初めてヴァヴェル国がどこに位置して、どんな形なのかを知りました。というか、ヴァヴェル国の方が竜王国よりも大きいのは意外でした。まあでも、大国が小国に負けることもしばしばありますよね。前世の記憶(歴史の授業)によればですけど。
 地理の勉強は少し歴史的なことも触れながらだったので、だいたい興味深く聞くことができました。