「ライラ様が気になるのはわかるんだけど、ほぼ毎回のようにダンスのレッスンに参加されては流石に困るというか……」
「ああ……そうだね」
 私がついうっかりインディゴに『ライラ様のダンスレッスンのお相手』を頼んだばっかりに、なぜか竜王様がレッスンに姿を現すようになってしまいました。それもほぼ毎回のように。休憩中ならともかく、急ぎのお仕事を後回しにしてくることもあるようで、その時は執事のフォーンさんが大慌てで追いかけてくる……なんてこともしばしば。
「フォーンさんから『呼ぶな』と暗に言われるのも面倒くさい……コホン、申し訳ないし」
「フォーンが小うるさいのはいつものことだから放っておけばいいさ」
「ええ、もちろん聞き流してるわ」
「聞き流せる許容範囲を超えてくるんだね」
「ええ」
 トープも想像に難くなかったようで、プッと二人同時に噴き出しました。

『竜王様を練習相手にしないでいただきたい!』
『こちらもお願いはしてませんのよ』
『だったらお断りすればよいではないか!』
『あら、フォーンさんはそんなこと竜王様に申し上げられますの?』
『いや……まあ……それは……』
『ライラ様からもお願いしてますけど、取り合っていただけませんの』
『むむむ……』
 フォーンさんと私で、こんなやりとりを何度もしています。ああ、もう。面倒くさい人です。

「別に、毎回レッスンの時間をお知らせしてるわけじゃないのに。いや、むしろ毎日変わるレッスンの時間を把握されていて驚いてるというのに」
「どうせインディゴから漏れてるんだろ」
「多分。あの愚息、そろそろ締めておかなくちゃ」
「あはは!」
 竜王様のお仕事が滞れば、自分の仕事も滞るのに。肩代わりすることもあるらしいじゃないですか。まったく、自分の首を絞めるのと同じですよ。
「しかし、竜王様の乱入をどうしたら止められるのかしら」
「私らが止められるお方じゃないしねぇ。でも、あのライラがちゃんとダンスできてるのか、想像つかないんだけど。私の知ってるライラは、なんてったって料理以外はポンコツだからさ」
「あら、意外と上達は早い方だと思うわよ。ライラ様は頑張り屋さんだから」
「それは認めるね」

「もういっそ、ライラ様の上達具合を見て、レッスンの回数を減らそうかしら」
「それしか方法はなさそうだね」