竜王様の吐き出す紅蓮の炎の威力はすさまじく、眠りの森がどんどん燃えて無くなっていきます。火力があまりに強いから、一瞬で灰と化しました。暗くなりかけた森と空の間に、炎と火の粉が踊っているようでした。森が焼け落ちていくにつれ、毒の霧も薄まっていったので、竜王様は空から広範囲に焼いていきました。その間、背中の私は——超強火のおかげで寒さが緩んでホッとしてました。
 竜王様の本気の力は圧倒的で、始まりも見えない鬱蒼としていた森があっという間に灰になってしまいました。残されたエフェドラの草原だけが青々と茂っていて、なんとも対照的な光景です。
「見渡す限り焼け野原ですよ……女王様になんて言われるか」
 そんな荒涼とした灰の野に、竜王様と私がポツンと佇んでいます。女王様は邪魔な森とは言ってたけど、さすがに焼いちゃったらそれはそれで怒りそうですよね。しかもよその国の王様によって、なんて。
「そんなことはどうでもよい。それよりも抗議をせねば」
「抗議ですか?」
「そうだ。あの魔法使い——なぜライラをこんなところに放り出したのか」
 むしろされる側では? とは思ったけど、どうやら竜王様は女王様というよりウェルド氏にお怒りのようです。
「それは私も文句が言いたいです」
「では、戻ろうか」
「はい! あ……」
「なんだ?」
 竜王様の背中に乗る前に。
「助けに来てくれてありがとうございます。ラファエル様」
 そっと頬(と思われるところ)にキスをして、そそくさと背中に逃げ——乗りました。