竜王様の名前を叫んだ途端、指輪から火柱が吹き出し、勢いよく竜が躍り出てきました。
「うわっ!?」
「ライラっ!」
 竜はすぐに人の姿に変化すると、私を強く抱きしめました。
「竜王様!! 来てくれた……!」
 ひとりぼっちの寂しさ、毒霧と寒さと暗さへの恐怖が、竜王様から伝わってくる温かさ——いや、むしろ熱さでほぐれていきました。ああ、助かった。まだ危機は脱してないけど、竜王様と一緒にいると、大丈夫。無敵になった気がします。
 しかし現実は、危機はすぐそこに迫ってます。感動の再会とロマンチックは後回しです。
「ごめんなさい。危険なこととは分かりつつも、一人ではどうしようもなくて呼んでしまいました」
「余が呼べと言ったのだ。気にするな」
「ありがとうございます。でも……あの……呼んでおいてアレなのですが、毒の霧が……迫っています。早く、ここから脱出しないと」
 このまま私だけでなく竜王様もおしまいです。竜王様が辺りを見渡し、チッと舌打ちしました。
「なぜもっと早く呼ばなかった」
「ひゃ〜! ごめんなさい!」
 ちょっと途方に暮れてました。
「早く余の背に乗れ」
「はいっ!」
 再び竜姿に変化した竜王様が飛び立とうとしましたが、いかんせん、私たちのいる地上より上空の方が、先に毒霧に覆われてきていました。
「ギリギリか……。余、一人ならなんとか突破できるが——」
「ごめんなさい」
 上空からの脱出を諦めた竜王様は地上に戻り、また辺りを見渡すと。
「森を焼き払う」
 冷静に、だけどスケールのでかいことを言い出しました。
「え!? そんなこと——」
「無理ではない。余から絶対に離れるな」
「はい」
 私はさらに強く、竜王様の背中にしがみつきました。