「なんとか……袋いっぱいにできた……」
 大きい袋に小さい花。途方もない作業でしたが、なんとか空が明るいうちに満杯にすることができました。袋の口を紐で縛った時には、疲労困憊でその場にへたりこんでしまいました。ついでに意識もトリップしてたかも。ハッと我に返った時には、陽が傾きかけていました。
「ヤバっ、陽が暮れちゃう。さっさとウェルド氏に連絡——」
 そこでめちゃくちゃ重大なことに気が付きました。
「私、ウェルド氏の呼び方知らなくね?」
 まさかの片道切符。そーいやウェルド氏から帰り方の説明を聞いた覚えもなけりゃ、聞くのも忘れてたわ。命懸けのうっかりとか、アホすぎて笑えん!! あまりの間抜けさに、その場に膝から崩れ落ちてしまいました。
「そもそもウェルド氏、〝送る〟とは言っていたけど〝送迎する〟とは言ってなかったような?」
『森までとは言わず、薬草の群生地までお送り(・・・)いたしますよ』あの時の会話——思い出せば出すほど、『送迎』とは遠ざかっていく……。勝手に私の中で『迎』の字が追加されていた可能性が大じゃない。じゃあ帰りはどうするつもりだったのよ。一人で眠りの森を抜けて来させる気だった? ——まさかね。でもこれが本当に片道切符だったら、これ、私、殺されかけてるも同然じゃない? そんな考えが思考を支配し始めました。