光の渦に飲み込まれ、ぎゅっと目を閉じ明るさに耐えていると、しばらくして光が和らいてきました。
 恐る恐る目を開けると、そこはもはや女王様のお部屋ではなく、代わりに一面、小さな黄色い花をつけた植物が群生する草原のようなところが開けていました。
「わぁ……綺麗。でも、さぶっ」
 深い森の奥にぽっかりと空いた、光の草原。見た目は春の野と見紛うばかりの光景ですが、実際は冬のような寒さが肌に突き刺さります。さすがは極寒の地、これ、夜になると凍結するんじゃ? 毒霧の前に凍死しそうな寒さです。
「ここが眠りの森の中心、エフェドラの草原ね」
 草原を囲む森は鬱蒼として人を寄せ付けない雰囲気が漂っていますが、エフェドラの草原は思っていたよりも広く、明るい場所でした。爽やかな風が草原から森に向かって吹いているので、毒霧が草原に入ってきていないのはこれのおかげかな。
「薬草のところに着いたって、竜王様に報告しなくちゃ。竜王様、竜王様〜」
 …………し〜ん。
 まずは報告と思って指輪に触れて声をかけたんですが、応答がありません。いつもならソッコーでお返事してくれるのに。
「あれ〜? あ、そういえば昨日インディゴ様が『遠いから魔法が届かないかも』的なこと言ってたような」
 魔法にも届く範囲があるのかどうかは知らないけど、とりあえず今のところ、指輪を使っての通信は『圏外』ということのようです。
「報告は電波——もとい、魔法が届くところに戻ってかからするとして——とりあえず、ここにある野草は全部エフェドラっぽいから、手当たり次第摘ませてもらいましょう」
 毒霧も凍死もお断り! 私は麻袋の口を広げ、薬草を摘み始めました。