翌日の朝食も厨房で済ませ、部屋で身支度を整えていると、女王様からの呼び出しがありました。呼ばれた先は、庭。そう、以前『竜王国スパイに行け』と話をされた因縁の場所です。絶対に何も口にするまいと決意新たに向かうと、すでに女王様が待っていました。
「食事もお茶も召し上がってもらえないみたいだから、お散歩でもどうかと思ってね」
 優雅ににっこりこちらに微笑みかける女王様。普通にしていたら本当に美人なので、言い寄る男がわんさといても不思議はありません。あ、優雅な仕草は、この人をお手本に真似っこしてたら上達するかもですね。
「我が君、麗しい白い肌が日に焼けては大変です。日傘をお持ちください」
 今日も女王様の一番近くに侍り、立ちあがろうとした女王様にサッと日傘を差し掛けるウェルド氏。
「ありがと。そうね、ライラックにも日傘を渡してくださる?」
「……喜んで」
 喜んでないな、ウェルド氏。答えまでに若干の間があったのを、私は気付いてるんだからね。相変わらず女王様ラブを隠さない人だなぁ……。
「女同士で秘密のお話をしたいから、ウェルドはここから遠慮してね」
「えっ? しかし……侍女はよろしいのですか?」
「だって女の子だもの」
「……わかりました」
 私も日傘を受け取り散歩の準備が整うと、女王様はウェルド氏を人払いしました。侍女はオッケーなようです。
 なんか、ちょっと様子見しただけなんだけど……女王様が鬱陶しく思っているのは、ウェルド氏じゃないかな。 
 なんとなくそんなことが頭をよぎりました。多分そうだろうなという予感はしますが、確定したいので、ちょっと、カマをかけてみますか。