やはり記憶は正しくて、私は迷わずお城の正門に辿り着くことができました。一旦様子見で通り過ぎてみたら、門は閉じられていて門衛さんが数名で守っていました。当たり前か。
「アポなし突撃だけど大丈夫かな。まあ、聞くだけ聞いてみよう」
 もしダメなら、使用人の使う裏口を使うという奥の手もあるしね。私はまた門まで戻り、門衛さんに話しかけました。
「すみません。女王様にお目通りしたく尋ねてきたのですが」
「…………」
 門衛さんの疑わしいものを見る目が痛い。いきなり『女王様に会いたい』って、見知らぬ女が訪ねてくるなんて、あやしい以外の何者でもないもんね。私を頭の先からつま先までまじまじと見ているのがわかります。今日の私は白いレースの襟がアクセントのネイビーの清楚系ワンピースを着ていて、ただの庶民には見えないはず。
「約束はあるのか?」
「あるような、ないような」
「なんだそれは」
 ていうか、お貴族様なら徒歩でノコノコ来ないけどね。
 アポの有無も微妙な、お貴族様のお嬢様でも庶民でもなさげな謎の小娘の登場に、門衛さんは動揺しているようです。
「名はなんという」
「ライラックと申します」
「確認してくる。ここで少し待て」
「はい」
 門衛さんはそう言い残すと、お城に入って行きました。

 しばらく門のそばで待っていると、さっきの門衛さんが戻ってきました。
「約束が確認できました。どうぞ、中へ」
「あ、はい」
 お客様認定されたのか、さっきと打って変わって丁寧な口調に変わっています。誰に何を確認してきたのか知らないけど、怖いくらいにあっさりと許可が降りたのでびっくりです。
 通れくるらいに門を開けてもらい、私は中に入りました。