眩い光がだんだん薄くなり、周りの景色が見え始めました。ここはもう、ヴァヴェル? どこに転送してもらえるのか聞くの忘れたけど、これでも過去はヴァヴェル人です。ま、なんとかなるでしょ。落ち着いて様子を伺えば、だいたいどこか判るはず。……って、私の横にそびえている重厚な石造りの塀、これって女王様のお城の塀じゃないですかね? じゃあ、こっちはお城の隣の公園では? いきなり見覚えのあるものにぶち当たると、パズルのピースが嵌ったように、次々と周りが見えてくるのが不思議ですね。今私のいる場所は、女王様のお城の裏手にあたるところで、塀の角を二回曲がると正門のある通りに出るはずです。
「かなりお城に近いところに転送してくれたんですね。さっそくだけど、無事、ヴァヴェルに着いたって連絡した方がいいのかな」
 言われていたことを思い出して指輪に視線を落とすと——来る前の出来事が蘇ってきました。
 一瞬だったけど、確かに触れた唇。
「うわぁぁぁぁっ」
 ちょっと今は冷静に報告とかできそうにないので、あとでまとめて報告しようそうしよう。
「——落ち着け私。とりあえず、女王様に会わなくちゃ」
 自分の位置確認ができたら次は行動あるのみ。私は記憶の中の地図を頼りに、正面の門を目指しました。