出来上がった軽食を持って行った時、ちょうど別方向のアプローチをしていたスプルース様が、薬について調べた結果が出たところのようでした。私たちがご飯を持って行っても、会議は止まることなく続けられていました。
「熱を下げる効能が強い薬草があればなんとかなりそうだよ」
「それはどんな……なんという薬草ですか?」
「エフェドラ、っていうやつ」 はいはい、話し合いは一旦停止して、ご飯食べてくださいね。食は健康の源ですよ〜。
「エフェドラ……この国には多分、自生していなかったような」
「そうだね」
 私たちがいるけどまるで空気にしか思っていないのか、話がどんどん進んでいきます。こっちはこっちで、心を無にして手早くお食事の準備に専念してます。一刻も早くこの場を立ち去りたい。
 やっと準備が整ったので、そそくさと退場しようとした時でした。
「その草はどこにある?」
「あ〜、えっと」
 チラッチラと私を見て、バーガンディーさんが言い淀んでいます。あ、いない方がいいってね。
「どうした、バーガンディー」
 竜王様がバーガンディーさんの視線を追って、私を見ました。ご心配なく、さっさと出て行きますから。
 でもそれは違ったようで、バーガンディーさんが私をチラ見した意味がわかりました。
「それ、ヴァヴェルにしかない草だろ」
 だから私を見たのかバーガンディーさん。
「ヴァヴェル……」
「ああ、そうでした」
「ヴァヴェルか〜」
 とうとう全員が私を見てきました。そうか、ヴァヴェルか〜、って、おい! 聞き流すつもりだったけど、聞き流せないわ。
 大事な薬草は、ヴァヴェルにしか自生してないって!?