「町で変な病気が流行ってるって聞いたけど、モーブさんたちは大丈夫なんでしょうか」
 お妃教育がないのでずっと厨房に入り浸っている私は、最近ご無沙汰しているモーブさんたちのことが心配になってきました。ティア・モーブは、夜はお酒も出すお店ですから、感染のリスクが高いと思うんです。モーブさんもですが、ラピスさんが感染したりすると、まだ幼いアスターまで危険に晒されてしまいます。
「モーブは、今のところ大丈夫らしいよ」
 モーブさんの安否はトープさんのところにも届いているようですが、ラピスさんたちのことは分かりません。
「私……ティア・モーブに行ってきてもいいでしょうか」
「うん……即答できないね」
「なぜですか?」
「モーブのところに行って、ライラが感染してこないとも限らないだろう?」
「あ……」
 確かにトープさんの言うように、私が竜王城にウィルスを持ち込む可能性があるのか。アスターのことが心配すぎて、すっかり抜け落ちていました。だからと言ってこのままここでぐずぐずと心配していても仕方ないし……。ならば、できる限りの感染対策をして様子を見に行けばいいんじゃない? 前世の知識もフル活用してね!
「感染対策はしっかりして、モーブさんたちの様子を見たらすぐに帰ってきますから」
「う〜ん……。ウィスタリアに相談しな」
「わかりました」
 本当は竜王様に直談判したいところだけど、お忙しいからそんな時間取れないでしょう。とりあえずウィスタリアさんにお願いして、様子だけでも見てきたい。
 私はウィスタリアさんのところに急ぎました。