執務室には、竜王様だけが待っていました。私が部屋に入ると竜王様が人払いを命じたので、すっかり二人きりの空間です。ジャケットを脱ぎ、シャツの首元も緩めた完全くつろぎモードでソファーでくつろいでいる竜王様は、アンニュイな雰囲気も手伝って男の色気的なものがダダ漏れです。部屋が静かなので、私の動悸が響かないか心配だわ。静まれ私の心臓!
「お待たせしました。お客様のお見送りは終わったのですか?」
「ああ」
「お疲れのようですね」
「ああ」
 お疲れなのか、短い返事ばかり連発してます。顔の上に腕を乗せ、ソファーに深々と座ってる姿はすぐにでも寝落ちしそう。というか、こんなにお疲れなのになんで私を呼びつけたのか。私も疲れてるっつーの。謎い沈黙が続いたので、いい加減厨房に戻ろうかと思った時。
「——腹が減った」
 ボソッと竜王様が言いました。いや、起きてたんかい。
「お腹が減ったんですか?」
「ああ。ライラのスープが飲みたい」
 竜王様も私がお勧めしたものを少し食べただけで、他は飲んでばかりだったもんね。そういえば前もそんなでしたね。
「ちょうど味噌汁を作ろうと思っていたところだったんです。竜王様の分も作ってきます」
「いいのか?」
「はい! ちょっと待っててください。ちょっぱやで作ってきますから!」
「ああ」
 私はドレスのスカートを大胆にガッと掴むと、できるだけ早足、いや、ダッシュで厨房に向かいました。