「俺は絶対に忘れなきゃいけないとは思わないけど。忘れなくても良いと思うけど、無意識に初カノと今の彼女を比べる癖や習慣は無くさないと結婚は無理だとは思うよ。」

「なるほどね。確かに比較した場合、今の彼女よりも記憶の中で美化された初カノとの思い出の方が圧倒的に優位に立つのは間違いないもんな。」

「ってかさ、あんた何でそんなに、ヒナちゃんのことを想い続けているのに別れちゃったのよ。そんなに好きだったら普通、別れずに結婚してるでしょ。あんた達、中学生くらいから付き合いだして、青春時代の全てを一緒に過ごしてた訳なんだしさ。」

朱音はいつの間にか、またワインを飲み始めていた。

「そういえば、確かになんであんなに仲良かったのに別れたのか俺も理由を聞いたことなかったな。」
健は空になっていた俺のグラスにワインを注ぎながら、過去を掘り下げてきた。

「今さら聞いてもあんまり面白い話じゃないけど、それでも聞きたいっていうなら話すけど。」
健と朱音のリアクションを伺うと、『早く話せ』と言わんばかりの表情で俺の方を見つめていた。

「仕方ないなぁ。」
俺は渋々、初カノとの思い出話をすることにした。