「遅かったじゃねーか。」

「いや、急な呼び出しを受けてから30分で着いているんだから、十分に早いだろ。はい、これ。」

「おっ、ワインなんて珍しいな。なんかあったか?」

「いや、別に。たまには、昼から飲むのも悪くないかなって思ってさ。」

玄関先でそんな会話をしていると、見慣れた靴が目に入ってきた。


「あれ?朱音(あかね)も来てるの?」

「おう」

「じゃあ、ワインじゃなくて日本酒の方が良かったかな。」

「まぁ、あいつは何でも大丈夫だろ、酒なら。」

「それもそうか。」

「お邪魔します。」

部屋に入ると、朱音がソファに座ってテレビを見ていた。
「あ、(まもる)じゃん!お疲れ!」

「おう、お疲れ。って、相変わらず自分の家みたいにくつろいでるなぁ。」

そう言いながら俺は朱音の隣に座った。

「お前ら、人の家でくつろぎすぎじゃね。少しは、コップ出すとか皿出すとか手伝えないもんかね。」

健がキッチンから嫌味を言っているようだったが、俺と朱音には聞こえなかった。

「相変わらず、自分たちに都合がいことは聞こえない便利な耳をしているんだな。子供の頃から本当に変わらないね、君たちは。」
嫌味を言いながらも、何だかんだ健は一人で黙々と色々と用意してくれた。

「ほら、準備できたぞ。守が買ってきてくれたワイン飲もうぜ。」

「昼飲みなんて最高じゃん。守は気が利くね。」

「だろ。今日は何となく飲みたい気分だっただけだよ。」

「これはまた何かあったな。仕方ない、朱音お姉ちゃんに話してみなさい。」
朱音は早く飲みたかったのか、手慣れた手つきでワインを開けてグラスに注ぎ始め、『とりあえず、乾杯〜』と飲み始めた。