週が明けて数日後。
廊下を歩きながら、クンクンと手首を嗅いでみる。
なんともウットリとする甘い香りが鼻腔をくすぐり、思わず頬が緩んでしまう。
月曜の朝、専務が紙袋をカウンターデスクに置いた。
『貰い物だけど、気に入ったものがあったら使ってくれ』
中に入っていたのは沢山の香水。せっかくなので日替わりでつけているけれど、どれもこれも魅惑的ないい香りがする。
須王専務は、朝の挨拶をしながら時々その香りを確認するような仕草をみせて微笑む。
てっきり香水が嫌いなんだろうと思ったのにそうではないらしい。
(専務はどんな香りが好きなのかな?)
限りなく本物に近かった誤魔化しのキス。あの時、専務の爽やかで甘い香りに包まれた。あれはどこのブランドだろう?
専務は私と二歳しか変わらないのに、とっても大人だ。
そう感じるのは学園時代の名残だろうか。子供の頃は上級生がとてつもなく大人に感じたから。
つらつらと考えごとをするうちに目的の場所に到着した。



