政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 振り返ると若い白人男性がニコニコと微笑んでいる。金髪碧眼の絵に描いたような美青年。ガラス玉のように美しい瞳にるい魅入ってしまう。

 ――なんて、きれいな目。

「タノシンデ、マス、カ?」

 専務から私に視線を移した彼は、片言の日本語で笑顔を向ける。

「ありがとうございます。とても楽しいです」

「大使の息子さんだ」と紹介してくれた専務は、聞きなれない言葉で息子さんと会話を始めた。息子さんの母国語と思われるマイナーな言語を、専務は流暢に話している。

(すごいなぁ、専務)

 こう言っては失礼だけれど、青扇での彼は不真面目にしか見えなかった。

 図書館やベンチで寝ているか、授業中なのに外廊下を歩いているとか、多分結構な頻度で授業をさぼっていたと思う。

 でも、それとこれとは違うのだろう。

 彼は商社マンとして非常に優秀だ。何か国語も自由に操り、人を魅了する力を持っている。

 コーヒーを出すために会議中に入る時の様子でわかる。いつだって相手側が感心したように彼の話に頷いているのだから。