政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

「明日は休みだし、好きなだけ飲んだらいい」

 渡されたのはワイングラス。深い紅の液体がとろりと揺れる。

「ありがとうございます」

 某国は南ヨーロッパの小さな国で、ネットで仕入れた情報によれば恵まれた温暖な気候らしい。

 私は申し訳ないことに国名すら記憶になかったので、今日大急ぎで調べた。専務が言っていた富裕層向けの総合病院建設の話もあるけれど、スオウグループでは某国とオリーブオイルとバルサミコ酢の取引がある。高価だが上質で富裕層に人気らしい。

 なるほどオードブルはとてもおいしかった。カルパッチョも、風味豊かな若いオリーブの香りがする。

「いい匂い」と思わず口から感動が漏れた。

「何を食べても上手いだろう? 魚介料理が多くて日本人の口にも合う。ギリシャに似てるんだ」

「ああ、ギリシャなら高等部の卒業旅行で行きました」

 青扇学園の卒業旅行は、十日間の地中海周遊だった。白い壁に覆われた地中海の島をめぐる旅は楽しかったし、ギリシャでの食事は魚介中心でとてもおいしかったのを覚えている。