政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 プラチナの鎖に真紅、深い緑や青にキラキラと輝く小さな宝石がついている。ブレスレットを見つめたまま驚きのあまり声が出ない私に、専務の甘い声が降ってくる。

「はずすなよ」

 ――え?

 顔を上げると、ジッと見つめてくる専務の瞳と視線がぶつかった。

 一瞬で絡めとられるような強い眼光に息を呑む。

「俺がいいと言うまで片時も外すなよ」

「はい……」

 戸惑いながら頷いたけれど。それはあの……。どういう意味、ですか?

「紗空」

(ええ? いきなり名前?)

「昨夜一晩中考えたんだが、君はとても――」

 とても?

「なんというか、気になるんだ。とても」

(え? なにが?)

「答えが出るまで、申し訳ないがtoAで秘書として働いてほしい」

「――はい」

 よくわからないけれど、とりあえず頷いた。

 一体専務はなにを言っているのだろう。

 私が気になる? 私のなにが気になるの?
 外しちゃいけないって、どういう意味のブレスレット?