政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

「あ、あの。大使とtoAとはどういったお付き合いなのですか?」

 パーティーのあらましは昨日聞いている。某国大使のバースデーパーティで、参加者は五十人程度。大使夫妻がオペラが好きなので、おそらくオペラ歌手の歌声を楽しむイベントなどがあり、基本的には飲み食いして終わりだと言う。

 それはそれとして、某国についてがいまいちわかっていない。一応自分でも調べたけれど、それで合っているのかどうか心配だ。

「あの国で、病院を作るんだ。まだ計画段階だが大使には何かと世話になっている」

「現地法人XとtoAとの総合病院事業会社の話ですか?」

「ああ、それだ」

 最近こまめに関係しているプレスリリースには全て目を通している。秘書になってから幸か不幸か時間は沢山あるので読みまくっていた。

 おかげでこうして専務が言わんとしていることがわかる。自分のしてきたことが無駄になっていないと思えば、自ずと顔がほころんだ。

「大使には今後ますます世話になる予定だからね。バカ高いワインと夫人が好きなトリュフチョコレートを用意したよ」

 ふたりでクスッと笑う。


 ふと、専務が私に向き直った。
「手を出して」

「はい」

 意味もわからず右手を差し出すと、専務はキラキラと輝く細い鎖を私の手首につけた。ブレスレットである。

「今日の記念に」