政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 昨夜のような優し気な須王専務は、何割増しにも素敵だ。

(反則ですよ、専務)

 酷い言われ方で叱られたことを、うっかり忘れてしまいそう。

 イケメンの特権。ずるい。


「おはようございます」

 宗方さんはいつものように爽やかな笑顔で現れた。

 あいさつもそこそこに、すっと差し出されたのは紙袋。

「専務が好きなコーヒーが入っています。専務にはこの豆で淹れてあげてください」

「ありがとうございます!」

 昨夜は、質問に答えるのに精一杯で、コーヒーの好みを聞く機会を逃してしまった。

 早速袋を開けてみると苦み走った芳醇な香りが広がり、袋にはマンデリンの印字が見える。

「専務が好きなのはマンデリンなのですね」

「ええ、専務は酸味が少ないビターなコーヒーがお好きです。それから――」

 宗方さんは続けて書類を一束とメモリースティックをカウンターデスクに置く。