政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 良かった。多分だけれど、専務に嫌われていたわけじゃないようだ。コーヒーの失敗を乗り越えれば、秘書として再認識してもらえるチャンス。三年がんばったんだもの、このままでは終われない。

 出掛ける準備を整えて、パーティ用の着替えのチェックをする。

 買ってもらったドレスはドレッシーなフィッシュテールのワンピース。色は赤。ナショナルカラーなら間違いないだろうと某国の国旗の色から選んだ。

 ドレスを決めたのは専務。三着ほど着てみたけれど最後にこのドレスを着た私を見て彼は大きく頷いた。

 ダークではあっても赤だし、前から見ると膝が思い切り見えるミニ丈なので派手だと思うし、私としてはちょっと気恥ずかしい。
『それにしよう』という鶴の一声がなければ、二番目に着たAラインのもう少し地味なドレスを選びたかったけれど、買っていただく手前譲歩した。

『あのドレスが一番君に似合っていた』

 帰りの車の中で専務が言ったお世辞は、お詫びの延長なんだろうけれど、〝あの怖い専務から聞けるなんて〟
 うれしくというより感動してしまう。