政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 立地条件も文句なし。麻布にあって職場に近く徒歩で通えるので、激込みの公共交通機関を利用せずに済む。朝はのんびりとヨガをしてシャワーを浴びてゆっくり朝食をとってという優雅な生活を送れているけれど。

 まさか全て専務の指示だったとは……。

 以前加郷に言われた。

『ここ社宅なんてないぞ? 住宅手当もない代わりに基本給が高いから』

『へえ、そうなんだ』

 自分は社宅だとも言えず適当にごまかしたけれど、あの時は西園寺が関係しているだけだと思っていた。

 加郷の戯言が脳裏をよぎる。

『専務、お前のこと好きなんじゃねぇの?』

 ありえない。それはありえないけれど、でも、なぜ? どうして。

 クエスチョンマークが大きく頭に浮かぶのだった。


 ***


 次の日の朝はスッキリと気分よく目覚めた。

 よほど疲れたのだろう、ベッドにもぐりこんでからの記憶がほとんどない。朝までしっかりと熟睡できた。

 泣いてからが長かった一日。

 昨夜、食事のあと専務はマンションに送ってくれた。