政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

「ひとり暮らしで困っていることはないのか」

 質問の意味がわからないけれど、困ってはいない。

「はい。とくには」

「実は君が住んでいる部屋は、俺が個人的にマンションを提供させてもらったんだ」

「ええ? 専務がですか?」

「ああ。君には西園寺から無理にきてもらったから。申し訳なくて」

 何とまあ。

「不自由していないといいんだが」

 本当かどうかを探るように、彼はジッと私を見る。

「あ、あはは。不自由なんて、とんでもない! 快適です。ありがとうございます」

 今住んでいるマンションは、toAに入社が決まった時に人事部長から紹介された。不本意な人事に対するせめてもの配慮だ言われている。

 家賃は無いに等しく、しっかりとしたセキュリティ。品のいいアイボリーのカーテンもソファーやテーブルも、果ては寝室にあるベッドに布団まで、入居当時何もかも新品で用意されていた。