政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

「えっと、青扇が自分には眩しすぎたというか。なので大学は普通に国立に……」

 私は田舎娘だ。東京都の隣の県の地方都市。街中にも自宅マンションはあるけれど、主たる住まいは田園地帯にある。

「そうなのか」と呟いて、顎に指先を当てた専務は考え込む。

 ええ? そんなに、悩みますか?

 青扇から青扇大学に進む人なんて、あなたのような生粋の御曹司や奨学金で通うその道のスペシャリストだけですと教えてあげたい。

 名だたる教授陣はずらりと揃っているし、通いたいのは山々でも、とてつもなく高い入学金に授業料を考えれば、おいそれとは進めないのが現実なのだ。

「西園寺に就職しようと思った理由は?」

(ええ? 今度はなによ)

 推しに会いたかった、とは言えない。

「じ、実家が不動産業を経営しておりまして、ささやかですが。いずれは跡を継ごうかと」

「君が跡を?」

 継ぐなんてほどのものじゃない。

「いえ、そんな立派なものじゃないんですよ。マンション一棟とアパートをいくつか持っているだけで店舗はひとつだけですし、両親は本業は農家だと言っているくらいですから」