政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 思うに、専務は私を生理的に苦手なのではないだろうか。

 何か理由があって、私をtoAで受け入れなきゃいけなくて、身近に置いておかざるを得なくなって、でも苦手だからどうしようもない。そんな感じなのでは?

「総務の速水部長が宗方に君を褒めていたそうだ」

 ハッとして横を向くと、専務は私を見て微笑んでいた。

「『彼女は優秀でしょう?』ってね。仕事もできるし、口が堅くて噂好きなところもない。人柄といい秘書にはもってつけの人材だって言っていたそうだ」

「そんな。いえ、とんでもないです。ミスばかりしていて全然ダメです」

「もっと早く西園寺に戻ってもらうつもりでいたんだ」

(ああっ!)

 そ、それですよそれ。私が知りたいのは。

「あの……、私はなぜ、toAに?」
「それは言えない」

 ――え?
 即答な上に言えないとは。

 おいおいと突っ込みたくなったけれど、そうキッパリと言い切られると返しようがない。

「君はどうして、大学は青扇に行かなかったんだ?」 

 また随分と唐突な質問に頭が真っ白になる。