政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 地下の駐車場で彼を迎えたのはリムジン。

 専務は私をエスコートするようにドアに手を掛けた。

 青扇学園ではお迎えのリムジンは珍しくはなかったし、便乗させてもらう機会もあったけれど。それとこれとはわけが違う。

 専務自らエスコートされたのでは腰が引けて、はいそうですかとは乗れない。

「どうぞ」

「あ、あの、専務、ドレスなら自分で用意しますから」

 ここまで来て往生際が悪いと思いつつ、とりあえず言ってみた。

「とりあえず乗って」

 いやいや、とりあえずでも乗ってしまったら、買いに行くはめになってしまうでしょ。

「専務、本当に大丈夫です。ドレスはありますし」

 精一杯の微笑みを浮かべ後ろに一歩下がったけれど、やはり聞く耳はないらしい。

 二ッと口角を上げた専務は「さあ」と促してくる。

「――はい。では、すみません。失礼します」

 恐縮しながら乗ったものの、なんだか拉致されたような気分だ。