政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 自分にそう言い聞かせ続けて一週間が過ぎた。
 とはいえ今日も頼まれた仕事は一時間もすれば終わってしまう。封筒の中身をチェックして閉じるだけの雑務だ。

 やれやれとため息が出る。

 仕事はないのに出勤時間はいままでよりも早い。

 なにしろ須王専務の出勤は役員の中でもダントツに早く、始業時間の八時半よりも三十分前には来ていたりする。

 今朝もノートパソコンを立ち上げたところで、須王専務が現れた。

 私の出勤と五分差。危ないところだったと胸を撫で下ろしながら、緊張してあいさつをする。

「おはようございます」

「おはよう」

 背の高い須王専務は、いつものように私をひと目見ただけで専務室に入っていく。

 頭を下げた私は、閉じる扉の音を聞き、緊張を解いて顔を上げホッと肩を落とす。

 朝のあいさつをしただけとは思えないほど、ドッと疲れが出た。

(はぁ……)

 "イケメン御曹司"――か。

 今朝会社の前で、たまたま早く出勤したという咲子さんと会った。