政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

「あとは随時、雑務をお願いすることになりますが……」

 宗方さんは、間を置いてから言った。

「基本的には、ここに座っている事が仕事です」

(え?)

「では、もうお昼ですし、どうぞ食事にいってください」

「あ、あの。すみません。えっと。座っているとは……受付係のようにということ、ですか?」

「ええ」
 宗方さんは軽く頷き、専務室に消えていった。

 ――そんな。
 今まで速水部長の元で培ってきたスキルは?

 結婚を機に異動願いを出した女子社員の空きを埋めるために、呼ばれたんじゃなかったの? ここに座っていることが仕事? 今日だって、午前中ずっと何も仕事をしていないのに?

 渦巻く疑問に茫然としながら時計を見ると、宗方さんが言ったとおり針は重なり合っている。気が抜けたようにへたり込んだ私の目に、メールの着信を知らせるバルーンが映った。

 加郷からだ。

【昼だから、外でランチしよう。話はそこで聞く。
 『雲の巣』にいる。
 お前が来ても来なくても、今日はそこに行くから返事はいらない。
 なお、このメールは自動的に削除されます。(俺だけの特権な 笑)】