とっさに父を止めたけれど、専務は『ありがとうございます。では遠慮なく』と答えた。
驚いたのは私だけ。
止める間もなく話は決まり、私と専務は母の勧めで一旦家を出た。ふたりでお茶でもしてきなさいと、気を利かせてくれたのである。
『優しいご両親だな』
専務はそう言ってにっこりと微笑んでくれた。
私は気恥ずかしくてたまらなくて、父の話に付き合ってくれてありがとうございますと謝ったけれど、それを真っ向から否定してくれた。
『付き合うなんてとんでもない。有意義な話を沢山できて、ありがたかった。スオウグループでも農業は力を入れている分野だから。生きていくうえで食は切り離せないからな』
相変わらず頼もしい専務は、車の運転もしてくれた。
母の車は私が運転するつもりでいたけれど、キーを渡してと言われて託した。



