多くの女子生徒のように、あの子は奴らに恋をしているんだな、と思った。

 俺が卒業する少し前のバレンタインデー。

 小さな包を持って、コウや仁がいる方向に歩いていく彼女を見かけた。

 あの子が恋をしているのは、コウなのか? 仁なのか? そんなことを思いながら成り行きを見ていると、彼女はコウや仁の前を通り過ぎ、真っ直ぐに蘭々の前に立った。そして手にした包みを蘭々に渡したのである。

 俺が大学生になると、当然彼女を見る機会はめっきり減った。

 青扇の大学と高校の校舎は、それほど離れてはいない。時たま遠くにいる彼女を見つけるだけになった。

 ただ漠然と、二年後にはまた近くで見かけるのだろう。そう思っていた。

 なのに二年経っても見かけることがなく、気になって調べると、彼女は実家のある地元の国立大学に進んだという。

 なぜだか軽いショックを受けた。

 ――なぜだ?

 その時の驚きを、今でもよく覚えている。

 俺は恋というものに全く興味がなかった。