絆創膏の匂いを嗅いでみると、薬品のにおいに混じって微かに夢の中で嗅いだ匂いがした。

 偶然見つけた元生徒会長を捕まえて、『これはなんだ?』と聞いてみた。一つ年上の彼は既に卒業していたが、その日はたまたま用事で学園に来ていたところだった。

 この微かな甘い香りは、この女向けの絆創膏独特の香りなのか? それが知りたかったが、元生徒会長にはその香り自体が嗅ぎ分けられない。

 他にも何人かに聞いたが皆同じように首を傾げるだけだった。

 絆創膏はそのまま捨てたが、香りの記憶は残った。

 二度目にその香りに気づいたのは新入生歓迎パーティだ。

 会場の入り口に立っていると、すぐ脇をひとりの女の子が通った。

 蘇る香りの記憶と、友達とお話をしながらクスッと笑ったその声にハッとした。

 ――間違いない、薔薇の家で絆創膏を貼ったのはあいつだ。そう確信した。

 ただ、それがわかったからといって、別になにもしなかった。