「え?」

「私は応援しているわよ、専務と紗空ちゃん、お似合いだもの」

「梨花さんったら。そんな冗談、シャレにならないですよ」

「気づかないはずないでしょ、専務、紗空ちゃんにだけよ。あんなに優しいのは」

「気のせいですって」

「紗空ちゃん、あんな性悪令嬢たちに負けちゃだめよ」

「だから、私と専務は何も」

「大丈夫、誰にも言わないわよ。安心しなさいってば、余計なことを言って専務にクビにされたくないもの」

 にっこり笑みを浮かべられたところで認めるわけにはいかない。実際私と専務は付き合っているわけでもないし、恋人ではないのだから。

「上司と部下という以外なにもないですよ? 本当に」

 どうあっても梨花さんは聞く耳がないらしい、クスクスと笑って頷くだけだった。

 私は苦笑いを浮かべたけれど、梨花さんの気持ちが本当はとてもうれしい。

 世界中を敵に回したような気分だったから。

 私が一方的に専務を好きでいるだけなのに、会長の前に出ると、自分がとてつもない悪事を働いているような気がしてくる。