政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 本当に聞きたいことを心の中で質問してみたけれど、彼には届かないようだった。

 専務は「俺がつけて、似合うと思うか?」と、白い歯を見せる。

「え?」

 クスッと須王専務が笑う。

「君がいらないなら捨てるしかない」

「それは大変、ありがとうございます。では喜んで頂きます」

 専務室に入る彼を見届けて、私はため息をついた。

(これはどういう意味ですか?)

 もしかして、私に迫られたのに手を出さなかったお詫びとか。

 旅館で迎えた朝、お風呂から出た私は身支度を整えて専務が起きるのを待った。

 寝室から出てくるなり、『大丈夫か?』と笑った専務。

『ダメです』

『やっぱり日本酒は効いたか』

『でも、お風呂に入ったらちょっとスッキリしました』

 昨晩のことは途中からよく覚えていなくてと、全ては酔ったせいにした。

 嫌われたり呆れられたりしていたらどうしようと、それだけが怖かったけれど、朝食をとりながらと専務は『次に来た時は、丹頂鶴を見ような』と、言ってくれた。