政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 食事が終わったあとは、窓際の小さなテーブルにお酒とおつまみを置いてソファーに座って飲み直した。

 そこまではちゃんと覚えている。

 やわらかい間接照明だけになった部屋の中で専務とふたり、窓の外の雪を見ていると、この世にいるのは私と専務だけのような気持ちになった。

 いつの間にか肩を寄せ合って。

『キスして、専務……』

 酔いにまかせてそこまで言った自分と、優しくキスをしてくれた須王専務。

 そこから先は曖昧。

 多分、私はそのままソファーで寝てしまいそうになり、彼が抱き上げて運んでくれた。

 据え膳食わぬは男の恥という。

 でもその言葉は彼の辞書にはなかったのだろう。人に言えない何かが起きた気配はない。なにかあればわかるはずだもの……。

 あぁ、良かったとホッとすると同時に、胸がチクリと疼く。

 キスをねだって隙だらけの醜態を晒しても、専務は冷静で優しい紳士のままだった。とりもなおさずそれは、そういうことなのだろう。