政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

「あ、えっと、どれから食べようか迷っちゃって。どれもおいしそうだから」

 今は何も考えなくていい。

 このまま白い雪の中だけの想い出を刻んだところで、誰かを傷つけるわけじゃないんだもの。

「よし、せっかくだから端から全部頂きます」

 食べて、飲んで。専務と笑い合って。

 ただ、日本酒が効き過ぎた。

「専務のアタッシュケース、すごいですね 何でも入っている」

「なんでも?」

「だって着替えまであるなんて、ビックリです」

「自分だって持ってきていたじゃないか」

「それは、あはは。だってー、雪に濡れたら……それにしても、本気の吹雪ってすごいですね、ふふ」

 次第に笑いが止まらなくなっていた。

「どうした?」

「なんだか楽しいです、専務」

 ――なんだかとっても 楽しいんですよ。

 でも、専務なんかキライです。

『嫌い? どうして?』

 だって、結婚するんでしょ?

『俺が? 誰と?』

 佐山グループの令嬢か、織田不動産の令嬢か。ミスター黄の妹さんとか、あとは。

『クスッ。まだいるのか?』