政略夫婦の愛滾る情夜~冷徹御曹司は独占欲に火を灯す~

 ああもう、どうしたらいいの。

「ん? どうかしたか?」

「あ、い、いいえ」

 目のやり場に困って挙動不審になってしまう。

 これはもう早いところ食事を終えて寝るしかない。食べることに専念しようと早速箸を伸ばした。

「お料理すごいですね! さすが北海道。毛ガニもタラバガニも食べやすく剥いてあるし、さあ頂きましょう」

「吹雪のおかげだな」と専務が言った。

 ドキッと心臓が跳ねる。

 深い意味はない。吹雪のおかげでこんなに素晴らしいお料理が食べられて、温泉を堪能できると言いたいだけだ。

 わかっているけれど、この状況を喜んでくれるのはやっぱりうれしい。

「本当ですね、吹雪に乾杯」と言いながら、ガラスの盃を専務の盃に当ててチンと鳴らした。

 専務はすっかりくつろいでいる。

 髪はもう乾いているけれど整髪剤をつけていないせいで随分と雰囲気が違う。

 前髪はサラサラと額に落ちているし、表情もリラックスしているせいかとても若く見える。